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伊崎の快活日記。

文学

明治文学の歴史

更新日:

このブログにも、多くの文学記事がたまってきた。

作者や作品にフォーカスした記事も多く、文学が好きな人にもそうでない人にも楽しんでもらえる記事になるよう努力してきたつもりだ。

だから今回は、もう一歩踏み込んで「明治文学の歴史」というテーマで明治時代の文学の流れをまとめてみることにした。

明治という時代

明治文学、という単語をよく聞くと思う。

漱石、鴎外という日本文学の大スターを生んだこの明治という時代とは何なのか。

まずはそこから考えてみたい。

 

このブログの管理人、伊崎の主観ではあるが、この明治という時代は簡単にいうと「混沌とうねり」の時代だったと思う。

日本の美的感覚、ユーモアが盛り込まれた江戸文学の後の時代。

そして、文明開化の時代。

 

日本的感覚から脱出し、西洋的感覚を受容しながら「本当の意味での日本文学とは何か」が追及された時代。

それが明治なのだと思っている。

 

西洋文化が流入し、社会全体が急速に近代化する中で多様化、変化する価値観。

これが文学の世界にも大きく影響した。

 

初期の明治文学から近代小説へ

明治文学の第一ステージは、まだ江戸文学の影響が濃いものだった。

文明開化の風刺的な作品も多く、その代表的なものでは『西洋道中膝栗毛』『安愚楽鍋』などが挙げられる。

しかしその後、坪内逍遥や二葉亭四迷によって西洋への理解を前提とした本質的な文学が進められる。

坪内逍遥は『小説神髄』の中で、良いこと悪いことの区別なく正確に記述することこそ小説だ、という写実主義を唱えた。(それまでの文学は勧善懲悪の話が多かった。)

二葉亭四迷は『浮雲』の中で言文一致体を完成させ、人間の心理を直接描写する方法を確立した。

 

西洋化への反発の時代

坪内逍遥や二葉亭四迷の活躍により、日本文学はずいぶん西洋化した。

その極端な西洋化への反動として、「日本らしさ」を追及した文学のスタイルが求められた。いわゆる擬古典主義である。

この分野で圧倒的な人気を誇ったのが幸田露伴と尾崎紅葉である。

尾崎紅葉は『金色夜叉』で義理人情の世界を演出した。

幸田露伴は日本の美的感覚に基づき、精神的な修行や鍛錬を行う人間の様子を『五重塔』などで表した。

「義理人情」「精神的鍛練」といったワードから、西洋への強い反発と日本的価値観の尊重がうかがえるだろう。

 

浪漫主義の発展

戦争は、最も過酷な形での国同士の接触である。

日清戦争で日本は初めて外国と戦争をした。(正確には奈良時代や鎌倉時代にも外国と戦争してましたが、国民総出という意味では初だと思う)

このとき外国と接触することで、日本人の価値観は大きく変容を遂げた。

外国と比較することで、自分たちは日本人である、という自我に目覚めたのである。

これを契機に自由や自分らしさが追及され、写実主義とことなる思想として浪漫主義が発展してきた。

森鴎外は『舞姫』で、海外留学の経験をもとに極めて近代的な価値観を表現した。

鴎外のほかに、徳富蘆花、国木田独歩、樋口一葉、泉鏡花といった文学界のスター集団によって、浪漫主義は強い力をもって発展した。

 

自然主義の台頭

フランスに端を発した自然主義文学は、島崎藤村によって日本にもたらされた。

島崎藤村の『破戒』や田山花袋の『蒲団』によって自分を赤裸々に語る作風が自然主義という形で成長する。

これは、自分の内情を語ることで自己の解放を求めていたことを示している。

自然主義の外側の文学

自然主義が隆盛を極めた時代にも、自然主義以外の作家は当然存在した。

漱石と鴎外

自然主義全盛の時代の中でもオリジナルの作風を完成させたのが、夏目漱石と森鴎外である。

高い教養、感性を持ち、時代を見据えていた。

漱石は『吾輩は猫である』を著し一気に人気作家となり、余裕派、高踏派などと呼ばれた。

鴎外は浪漫主義の姿勢を貫き、叙情的な表現で『鴈』『青年』を発表した。

耽美派

自然主義に囚われないといえば、耽美派もそうだろう。

美を尊重する耽美派の代表的な作家は永井荷風と谷崎潤一郎だ。

永井荷風は『あめりか物語』『ふらんす物語』で留学経験を書いたり、『すみだ川』で西洋文化にうつつを抜かす社会を批判したりしながら豊かな美しさを描いた。

谷崎潤一郎は『痴人の愛』『刺青』などあまたの作品で女性の官能的な美しさを文学へと押し上げた。

 

まとめ

このように、明治という時代は文明開化に端を発し、日本的価値観と西洋的価値観との折衝の中で大きく発展していく一方、夏目漱石や森鴎外のように自身の文学を貫くもの、谷崎潤一郎のように自身の性癖を貫くものが存在した。

様々な思想、主義のもと、今なお愛される文学のスターたちがしのぎを削った時代のうねりこそ明治文学の礎である。

だからこそ、明治文学はあまたの人を魅了するのではないだろうか。

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